私の住む街、イタリアの首都ローマ
路地裏に昔ながらの小さな職人工房が、
まだほんの少しだけ残る街。
人々の想いと終わらない物語と息遣いを、
ずっとずっと見つめて続けてきた街だ。
些細なキッカケは、
おじいちゃん職人との出会い。
今では数少ない、
この街に残る熟練職人のひとり。
昔ながらの道具で革を切り、
年季の入った古い相棒のミシンを踏む。
代々受け継がれてきた職人技は、
心に残る思い出や大切な贈り物に似ていると思う。
いつか失われてしまう、
おじいちゃん職人だけの熟練した技。
「世界にたったひとつ物語」みたいだ。
思い出すのは、大好きだった祖父の姿。
おじいちゃんも革のバッグを使っていたっけ。
それは、月日が刻まれた祖父だけの
素敵な革のバッグだった。
祖父の持ち物は、
古い時計もみんな宝物みたいだった。
大事にしてきた大切な物を、
いつも嬉しそうに見せてくれたね。
祖父が好きだったものは、
いつの間にか父が大切に使っている。
母のお気に入りは、
いつしか私の好きなもの。
物語はいつだって、
誰かのもとで大切に紡がれてゆく。
❝ 大切に作られた職人さんの鞄を、
もっともっと多くの人に使ってもらいたい ❞
おじいちゃん職人は、
この先ずっとは鞄を作れない。
イタリアから少しずつ失われつつある、
それは伝統を受け継いできた
本物のArtigianatoたちだ。
そんな単純な想いから、
職人工房を見つけては覗いてみる。
職人さんたちの「物語」を探す、
私の小さな物語。
長く大切にしたいもの
今ここにしかない特別なもの
誰にでも必ず、未来へと紡ぐべき
自分だけの大切な物語がある。
イタリア語で「storiaunica」は、
たったひとつの物語
そんな意味を持つ、
❝storia❞ と ❝unica❞
ふたつの単語を繋いだ言葉。
たくさんの誰かの物語を繋ぐ
たくさんの誰かの
❝ たったひとつの物語 ❞
誰かの大切な想いは、
きっと誰かの勇気になる。
ローマの街角から、
たくさんの方々の出会いを繋ぎたい。
そんな想いを込めて。