
上質で美しい「イタリアンレザー」
■老舗タンナーが軒を連ねる小さな街
アルノ川流域にある「サンタ・クローチェ・スッラルノ」(Santa Croce sull’Arno)という名前の小さな街は、数多くのタンナーが集まる革の街として世界的に知られています。
このサンタ・クローチェと呼ばれる小さな地区こそが、イタリアが世界に誇る「イタリアンレザー」の生産地となっています。
世界三大レザーのひとつであるイタリアンレザーは、この地域で生み出される「ベジタブルタンニンレザー」のことを指しています。
当ショップが扱う革工房「Leather Craftsman」の商品も、このサンタ・クローチェ地区のタンナーから取り寄せる上質なベジタブルタンニンレザーを使用して作られています。
皮が「革」として生まれる工程
■革鞣しとは?
動物の「皮」を加工して作られる製品のことを、私たちは「革」と呼びます。動物の皮を「革」として利用するためには、まずは皮の腐敗を防ぎ、製品化するための加工を皮全体に施す必要があります。
皮を革へと変えるための加工行程は「革鞣し」(なめし)と呼ばれ、その加工作業を行う製造業者のことをタンナーと呼びます。
一般的な〝革鞣し〟の行程には、「クロム鞣し」「タンニン鞣し」と呼ばれる二つの技法が用いられています。(※現在は「混合鞣し」と呼ばれる両者を組み合わせた技法も活用されています)
どちらの方法で鞣されたかによって、革の名称が変わってきます。
ベジタブルタンニンレザー
■「鞣し剤」と「技法」による革の違い
ベジタブル・タンニンレザーとは、後者の「タンニン鞣し」によって加工された革のことです。
化学薬品を一切使わず、植物性から抽出された ❝タンニン樹液❞ を溶かした水溶液に長時間浸し、時間をかけて濃い→薄いと順番に浸透液へ浸透させていく、古くからの伝統的技法です。
一方の「クロム鞣し」は、鞣し剤に化合物 ❝塩基性硫酸クロム塩❞ を使い、短時間で仕上げる技法です。タンニン鞣しの行程よりも時間と手間がかからないため、価格帯は比較的安価なものとなります。
また、革本来の色を生かすタンニン鞣しとは異なり、着色が容易なので、色合いの自由度が上がります。
クロムで鞣された革の質感は軽く柔らかく、使い込んでも風合いにそれほどの変化は起こりません。また、ベジタブルタンニンレザーに比べてキズが付きにくいという特徴があります。
育てる悦びを感じさせてくれる革
ベジタブルタンニンレザーの特徴
- 伸縮性が高く、型崩れがしにくい
- 表・裏・断面ともに硬く、丈夫である
- キズは比較的つきやすいが、使い込む程に味が増して手に馴染む
- 紀元前30世紀頃に始まった伝統技法で、1ヶ月以上かけて鞣される
■触れることでより手に馴染む
使い込む程に革の質感が柔らかく変化して手に馴染み、人の手の作用によってツヤが風合いがより深く増していくのが大きな特徴です。
使い初めの際に「少し革が硬いかな?」と感じた時は、表面に保護クリームを塗りこんであげることで革がより馴染みやすくなり、キズや汚れの防止にもなります。
革用の防水スプレーと併用することで、水ジミからも革を守ることができます。
世界に誇るイタリアンレザーの水準
アルノ河の豊かな恩恵を受けるレザー
例えば、同じ工程で行われた鞣し革であっても、作業を行う国や地域によって色合いや風合いなどに独自の違いが生まれます。
イタリアの革鞣し産業が世界的に有名なのは、トスカーナ州の豊かな土壌や水質から生まれる恩恵と、代々受け継がれてきたイタリアの伝統技術が上手に混ざり合ってのこと。
そのためトスカーナ州で生まれる革は、世界でも類を見ない美しさと品質を持ち合わせているのです。
トスカーナ州の鞣し革は、「トスカーナ産植物タンニン鞣し革協会」に加盟する22の伝統を受け継ぐ革鞣し工房によって生産されています
トスカーナ産植物タンニン鞣し革協会は、革に対して国際基準よりもさらに厳しい品質基準を設けており、その規格を満たした高品質のものだけが「イタリアンレザー 」として認定されます。
2.化学薬品は使わず、植物タンニンのみで革鞣しが行われている
3.主要な作業工程が、トスカーナ州で行われたものである
このような厳しい基準をクリアして生まれる革、イタリアの「ベジタブル・タンニンレザー」は別格の美しさを持っています。
クロムで鞣された革よりも多くの時間と作業工程を踏みながら加工されるため、高価な革としてクロム鞣しの革と一線を画した存在でもあります。
イタリアで生産されるベジタブル・タンニンレザーは日本とは異なる種類の染料なども使って鞣されているため、日本では見られないイタリアならではの美しい色合いと風合いを見ることができます。
花の都フィレンツェを有するトスカーナの大地の恩恵と、イタリアの伝統文化が生み出すタンニンレザーの高い品質と美しさは、イタリアから届く革製品を手にするひとつの大きな喜びにもなっています。